そして二人は幸せに暮らしました~その3~

むかしむかしあるところにそれはそれは美しい女神さまがいました。森で鳥やけものたちとたのしくくらしていると、こうやにすむまほうつかいはうらやましがって女神さまをみにくいカエルにかえてしまいました。鳥とけものは女神さまだと気づかれないでみにくいカエルを森からおい出しました。女神さまはシクシクと泣きましたが、なみだをぜんぶながしてなけなくなったのでピョコピョコとおうちをさがしにいきました。ですがどこの池もみにくいカエルを入れてくれませんでした。ようやくみつけたのはだれもいないきたない池でした。そこでくらしているとある日、王子様とけらいが池のそばを通りました。おおきなおおきな風は王子さまのあたまからぼうしをとばして池におとしてしまいました。おつきの人はとろうとしましたがおよぐにはちょっと遠くて、きたない水に入るゆうきもありませんでした。そこで女神さまは「わたしがとってきてあげましょう」と言って池の中に飛び込みました。スイスイ泳いでぼうしを取ると王子さまのところまで持って行きました。おつきのひとはみにくくてよごれているカエルをちかづけたくありませんでしたが、王子さまはすぐにカエルをだきしめて「ありがとう」と礼を言いました。それだけでなく、ほほにくちづけをしました。いちばんのおれいをされたのでうれしくて、ないはずのなみだが出てきました。するとたちまちもとの美しいすがたになり、王子さまもおつきの人もびっくりしました。女神さまは心やさしい王子をきにいって王子も美しいすがたをスキになり、そして二人はしあわせに暮らしました。めでたしめでたし。

―――お母さんから聞いた昔話―――

「○○○○」

「お・は・よ・う、ですね。じゃあ○○○○○○○○○(お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す)」嬉しいくて声が出ないように今日は大丈夫。首を捻って分からない。口が小さかったかな、やっぱりパクパクで会話は難しい、けれどこれじゃないと喋れないんだから。喋ってる、私があの奥様と。何度も何度も口を動かしてゆっくり大きく窓の外の奥様に分かるように伝わるように。違う違う、わかっていただけるように伝わっていただけるような。

「○!○!○!○!○!○!○!○!○!(お!・は!・よ!・う!・ご!・ざ!・い!・ま!・す!)」これなら奥様にも伝わったよね、ついでに声なんて漏れてないよねこの時間は誰も来ないはずなんだけど。あ笑ってくれてる私に。今ので伝わったってことだよね、奥様が私と一緒におしゃべりしてくれてる。私が喋ったことが奥様に、“あの”奥様に伝わっているなんて。もっと、おしゃべりがしたい私がもっと奥様の口のことがわかるくらい頭が良くならないと、奥様が分かりやすいように口を動かさないと。このお屋敷でおしゃべりしてもいい人なんだから。

窓を拭いている時だけ挨拶することができる挨拶しかできない奥様。魔法によって物になってしまった女神様、ずっとかどうかわからないけどきっとずっとずっとルクベスさんと旦那様しか喋れなかったはず。それが、こうして私と。私と!!!!!!!!!!!!ここずっと窓ふきしかしていない。毎日窓を拭きなさいとしか言われない。あの日以来、ずっと同じ窓を拭き続けている。お、奥様が。奥様が私とおしゃべりするためだけに、お仕事を決めて、変えてくれるなんて。

「えへへ」

声に出てた。奥様が首をかしげてなあにって。もし声がちゃんと出せたら一杯お話できるのに、動きだけじゃ挨拶しかできない。喋るなんてことがなければよかったのに。口を動かせば誰でも伝わればでもそうしたら、旦那様はそれを禁止してしまうのかな。きっとそう。だからこうしてできることを少しだけだけど、ちゃんととやって、少しでも長く奥様を人にしないと、私はだから、きっとそう。

【旦那様】;奥様を物にしている悪い魔法使い。

本当にこの人が奥様を好きすぎて魔法をかけているんだろうか。この人が奥様に近づく人をみんな殺してしまうのかな。魔法使いよりもクマみたい、私なんてすぐに食べてしまいそう。本当に食べてるわけじゃないと思うけれど。奥様とは神様のおかげであいさつして返事もしてくれるけれど旦那様とお話できるのは多分私がお婆ちゃんになっても来ない。旦那様が本当に奥様のことを好きなのか、私がもっともっと頑張ったらそれを知ることが出来るのかな。奥様にもっとお話ができるようになったら聞いてみようかな。旦那様と一緒にいるときは奥様はどんな表情をしているのかな。私と同じ私よりも綺麗な微笑みをしてるの?お母さんとお父さんはいつも笑っていたけれどあれよりもきれいに二人で笑うのかな。それとも。いつも乗っている馬車がお馬さんが暴れて下敷きになって旦那様が・・・。奥様は自由ですよおしゃべりしましょう一緒に今日の天気はきれいですね、何を読んでらっしゃるんですか、奥様はまるで女神様です私の女神様。私を連れて行ってくれますかどこかはわからないですけれどどこかダメダメなにをそんな事は考えちゃダメなんだ、旦那様は魔法使いのクマ、でも奥様の夫さんなんだから私は奥様とおしゃべりできるなんだろう、おしゃべりできる人なんだから本当に何を考えてるんだろう。

「・・・をしているんですか」

「はい?」

「何をしているんですかと聞いたんですよ、手を休めて一体何をしていたんですか」

「ごめんなさいゾンナさんボーっとしていて」

「気を付けてください。最近多くなっていますから」

奥様の微笑みは麦のよう。だけども粉にしてパンにしなくても私を元気にしてくれる

奥様が口を開けば私の耳には小鳥のさえずり、教会の歌よりもきれいなきれいな

奥様が歩けば、ぴかぴかな廊下が全部花畑に見える。

奥様の髪はお日様を浴びるとキラキラ輝く。

奥様のお肌はお日様を浴びるとお日様よりまぶしいの。

奥様は私なんかの為に分かりやすく口を開いて、私がわかりにくくても楽しそうに首をかしげる。それが、とてもとても綺麗な女神様のかわいい所を見れるの。

奥様奥様、麦、教会の窓、花、きっと女神様も奥様を言うにはもっとすごい言葉があるはず。奥様のように難しい本を読んでたら奥様を言う言葉がわかるのに。奥様は奥様だ。私はもっと奥様を奥様じゃなくて言いたいけれど、ああ奥様奥様奥様。私はずっと奥様の事を考えてればいいんだ。それでいいんだ。それだけで私はとっても幸せ。

それが悪かったんだね

「リアリさん、悪いんだけどもうしないでくれる?」

冷たい目違う全然違う。怒ってるんだ、私怒られているんだ。ルクベスさんの怖い顔。お母さん、いつも優しいのに怒ると寒くなる。部屋で二人きりで誰もこれをあったかくしてくれる人がいない。廊下を掃除していたかった。。体が全く動かない。おなかいたい。

「なん、の、ことですか」

「会話ですよ。そう呼んでいいかはわからないですけどね」

やっぱりルクベスさんは知っていたんですね。ですよね分かってましたはい分かっていました。そのはずですよね、だってルクベスさんは奥様をずっと見張っていろと命じられているから。

「あの、やっぱり、ダメです」

「ダメです」

「よね」

「いいですか、今こうやって二人っきりでしゃべらないといけない事なんですよ。これを知られたらどんな目に合わされるか。あなたも私もお奥様も」

「でも」

「ダメなんです。分かりますよ分かります、奥様のことを思ってのことですけれどそれですら許されないんです」

「少しだけなんです、声も出してません」

「本当に少しだけなら私も目をつぶりました、でも分かっているでしょう、あれは違います」

「○○○○○○(良い天気)」

「○○〇○○(そうですね)」

「○○○(元気?)」

「○○(はい)」

「○○○○○○(よく眠れた?)」

「○○(はい)」

「○○〇(良かった)」

「○○〇○○○○○○○○(何読んでいるんですか?)」

「○○〇○○○○〇〇(出会えないはなし)」

「○○〇○○(出会えない?)」

「○○○○○○○(恋人たちが)」

「○○○○〇○○(どうしてですか)」

「○○〇○○○○○(悪い人たちがね)」

「○○(はい)」

「○○〇○○(邪魔するの)」

「○○○○(かわいそう)」

「○○○(でもね)」

「○○(はい)」

「○○〇○○○○(二人は合うの)」

「○○○○(どうして?)」

「○○○○○○(好きだからよ)」

★私もあんなにいっぱい喋れるなんて思いませんでした。少しでも奥様のために頑張れるように、奥様の言葉が分かるように一生懸命努力して奥様をちょっとの間でもと思ったんですけど。自分でも未だに信じられません、奥様と喋れるなんてとか、声に出さなくても会話ってできるんだなぁとか色々あるんですけど、これって夢なんでしょうか。まだ私は家のベッドの上で寝ているんですか?起きたらお母さんのお手伝いをして、お裁縫をして、一緒にご飯を食べているんでしょうか。でも、奥様が、私だけのために、私のために、微笑んでくれている、夢みたいに綺麗なあのことは夢だとは思いたくは。

「挨拶くらいだったら、私も見逃しました。ですが、流石にあんなにやっていたらおかしく思われます。正直に言いますと、あなたを毎日あそこで掃除させている時点で変に思われていますからね。奥様のご命令ですから何も言えませんけど」

「あの」

「なんです」

何も思いつかない。言いたい言わないと、これは私と何よりも奥様の大切なことなのに。お腹痛いお腹痛いお腹痛いお腹痛い、何か言わないといけないんだ、ルクベスさんの目が

。お腹痛いお腹痛いお腹痛いお腹痛いお腹痛いお腹いたいおなかいたおなかいたいおなかいたいおなかいたいおなかいたいおなかいたいおなかいたいおなかおいたいおなかいたい。

おなかいたい

「あの・・・、その・・・、ええと、奥様が・・・・・・」

手が震える勝手に手が。

「奥様の為に一生懸命になってくれるのは分かるのよ」

「ぁ」

「私だって何も思ってないわけじゃないけれど」

「ぁ」

「でも、分かって奥様は旦那様のモノ」

「ぁ」

何か言わなきゃ何か今言わなきゃ私に奥様が何で話してくれたのかわからないんだから。

「ぉ、ぉ奥様は、人なんですよ!」

「分かってはいますよ」

もうだめです。奥様ごめんなさい何も思いつきません。私がもっと頭がよかったらこのお腹のグルグルしているのをちゃんとルクベスさんに伝えられるのに、何もわからない。出ないで今泣いちゃったらなんだかダメな気がする。だから泣きたくないのにどうして勝手に出てくるの。私が殺されるならまだいいのにこれで奥様はまたモノにずっとなったままで。でも挨拶くらいならいいんだ。少しだから。

「挨拶くらいなら」

「こうなっちゃった以上、それもダメだと思うのよ」

「そんなぁ」

「リアリさんの優しさを奥様が気に入ってるから、これ以上近づけちゃうと」

「もしかして追い出されますか」

「旦那様が知ったらね。運がよかったらってのも付くだけど。今後奥様と関わりを持たないように、その、頑張って心を強く持ってね」

持てないですよ。私もう奥様のことしか考えていないですから。いったい何がダメだったんだろう私がもうダメだったんだ。私がもっと奥様の事を考えてればみんなに分かりにくいように喋れたのに。奥様とおしゃべりできるから奥様が笑ったら太陽が雲に隠れて見えちゃう。ただの窓だったのに、教会の窓みたいになって。本を読んでる時も廊下を歩いてる時、はあんまり見たことないけれど2人しかいなかったけれど。そんな私となんて、あんなにうれしかったのに回り一面が麦畑になっても奥様が輝いて見えていたのに麦が全部枯れちゃった。私あんなにうれしくって嬉しくって浮かれちゃって、奥様が居れば麦畑がなくたって大丈夫だった。奥様がいれば私なんて、そうだ!だからダメだったんだ、私奥様のためにじゃなくて私のために奥様と喋っていたんだ。もっと奥様の事を思っていたらルクベスさんが怒ることもなかったのに、奥様のような綺麗な方と喋れるだけでもよかったのに、そうだったんだよね、もしかしたら私も旦那様と一緒で者扱いをしていたのかも。女神様と話をしてるんだって私は思っていたけれど、結局私はおとぎ話の中には入れなかったんです、もっとこう私は私なんだって思っていればそんなこと思わずにずっとおしゃべりの相手出来ていたのに。奥様は私なんかを気に入ってくれたのに、私きっとそうだったんだ。あの窓の向こうに行きたかったんだきっとそう。廊下も奥様と一緒に歩きたかったんだ。私がそんなこと思っていたから。そうだ私奥様のためにじゃなくて全部私のためにやっていたんだ。ぁぁもうやだぁ。私が私のせいで、私なんかが私がもっと頭が良くてちゃんとわかってたら。全部私が悪いんだ私なか死んじゃえばいいんだ。私なんて死んじゃえばいいんだ大嫌いもう嫌だもう死にたい、奥様のことをもっと考えればよかった。考えないと絶対ダメだったのに。なんで考えなかったんだろう、あんなに旦那様は危ないって言われてたのに、バレたら死んじゃうって知ってたからもっともっと、おとなしくしてれば奥様の魔法を解くことができたのに全部私が悪いんだ全部私が悪いんだ。奥様ごめんなさい奥様ごめんなさい奥様ごめんなさい。消えたい死にたい消えたい死にたいいなくなくなりたい。

金色の麦があっという間にシオシオになっちゃったけどこれは?お父さんこんなに小さい顔になって、寒いからなの私寒いの大好き。麦が?それでこうなっちゃったんだ。でもこの前はピーンってまっすぐになっていたよ。「一日で死ぬときはあっけなく死ぬ」

私は二度と奥様の顔を見ることはないんです。さようならもう私はおうちのため働くことだけ考えないといけないんです。はじめはそうだった、この大きなお屋敷でおしごとできるだけで楽しかった。なのに私は知らない間に窓から見てた空の下で並びたかったなんてだからこれでいいんです。奥様にかかった魔法を解くことはできなかったけど、私は王子様じゃない。そうです元々女の子ですから。でもいつになったら来てくれるんだろう、それ思っても私は何もできないし、足音が近づくたびに後ろを振り向きたいのに怖くなる。本当に女神様がやって来るのを心待ちにしていたのに寝る前に話してくれたおばけが来るみたい。女神様はお化けになっちゃった。なんて、あんなに泣いたのにどうしてこんなことばっかり考えているんだろう。「見てもいけません」見たら、また奥様とお喋りしたくなっちゃう。ルクベスさんは私わたじゃなくて奥様とついでに私の為を思って言ってくれたんだ。元々私はお掃除するだけなんだ、これが元々。

「どうしましたか」

「いえ何でもありません」

「体調悪いならばいつでも言ってください。休めませんがある程度の調整はしますよ」

「大丈夫です」

「本当に大丈夫ですか、私が知っている限りあなたの中で今が一番ひどい顔をしていますよ」

「そうですか?」

「ずっと同じ窓ばかり掃除していたのがやはり何か」

「関係ありませんから大丈夫です」ごめんなさいゾンナさん関係しかありません。こうやって私仲を心配してくれる人がお父さんお母さんじゃなくても一杯いるんだ。なのに私が私の為に奥様の事を考えるのはこの子はそんなことを考えていたのねって思われちゃうし、そのせいで奥様のお喋りをなくしてしまった。

「ゾンナさん」

「何ですか」

「私頑張りますよっ」

そうです私頑張るんです。頑張って、おしゃべりは出来ないけれ奥様の為になることを少しでもして、お金を稼いでゾンナさんに言われたことをすぃないといけないんだ。私のことを思ってくれている人の為にも私は頑張らないといけないんだ。だから、

だから早く通り過ぎてください、昨日も今日も。いつも通り早くお願いします早く通り過ぎてください。昨日も今日も廊下しか見ていませんから、私はあなたを見ることはしません。見てないんですよずっと言われてからずっと、私はやっぱり窓の外には行けないですから、ずっとずっと通り過ぎてください。昨日もその又昨日もそうだったから今日もそのままで行ってください。もうあいさつしたくないんです、どうかあの場所に行って素敵な本を読んでください。私なんかがいる場所ではないんです。さぁ早く行ってくださいさっさと行ってください、どうして一言もしゃべらないんですか、足音も聞こえないから動いていないんだよね。どうして、止まるんですか私の前で。私の前?かどうかはわからないけれど、どうしたんだろう、なんでなんだろう。見たい見てはいけない、見たらまた私はこの前言われたばっかりなのに私は何もわかっていない。関わったら誰も不幸になるクマさんに食べられる。何度も何度もゾンナさんに言われてルクベスさんに言われて、それははうんと昔の話じゃないんだ。私はダメダメだけど、お母さんには話を聞くいい子だって言われた。だからここにいるんだ。話を聞いて、ちゃんと廊下をピカピカにしないとうん、だから。見ちゃダメ見ちゃダメなんだ、私は何をしているのか、どういう顔をしているのか気になっちゃダメなんだ。そうじゃ、ないと、奥様、が、奥様が、奥様が?おなかの中が熱い、おなかから口を通って目から頭に。首をちょっと回せばすぐそこに奥様がいる。でもルクベスさんもいる。あんなに心配してくれたルクベスさんが。どうして奥様を止めないの、どうしてルクベスさんは何も言わないの。もしかして後ろにいるのは奥様じゃない、でも奥様が来たから壁を見てるわけで。だめだ、だめだだめだ後ろ見ないずっと壁を見てるたったそれだけの事なんだからちゃんと守らないと。ああどんどん熱いかゆいのかもしれない。胸が足と足がつながってる所が何だろうこれは。解らない、とりあえず見る」だけで、見るだけならすぐ終わる。見たらきっと奥様もすぐ行くはず。でも見るのすらダメなんだって、見ちゃダメだって。体が熱いのか寒いのか、もう立てない早く横になりたい。夜が早く来ればいいのに早く早く早く。もうちょっと壁を見てればそれで。首を動かす。私の息しか聞こえない奥様に聞かれてないよねこんな声。どんどん息が出来なくなってるどこが悪いんだろう胸から体全部にでも胸じゃない旨のもっと奥、分かった!胸の止まったら死んじゃうところが変なんだ痛いようでいたくないでも悪い感じが。そうなんだ見ないと私死んじゃうんだ。壁の反対側で聖母様のように後ろに光を背負ってた。窓の光なんだけど、奥様の光でしかないんだ。あの目、あの目私の中からお母さんもお父さんも、ミセス・メキュベリーもミスター・チーリーも、ゾンナさんもルクベスさんも熊も、金色の麦畑もなくなっちゃった。全部忘れちゃった。ルクベスさんは横にいるけれど全部が奥様でいっぱいでごめんなさいあんなに言ってくれたのに、ルクベスさん顔が全然わかりません、奥様が開いたのでもっと見ないといけません。口を横に動かして次に縦に動かして舌を上から下に。

「○○(来て)」

「○○○○(行きます」

昔聞いたお話だと女神様にかかった魔法は簡単なことで解けちゃった。簡単なことが一番大事なんだって言う事。私がこうして、奥様の横に並んですぐ横見たら簡単なことで窓の向こう側に行けるんだってがわかった。奥様とこうして隣にいると旦那様が相手でも解くことが出来る自信がある。私が奥様を女神様に戻すんだ。

ルクベスさんはあれからずっと話してくれなくなった。お母さんみたいに優しくて怖かったのにとってもびっくりする目で見てはくれるけれど。怒ってるわけでもないけど泣いてるわけじゃないあの目はいったいなんなんだろう。旦那様に教えないでいてくれている。やっぱり奥様をずっと見ているからってなにもしなかったことは間違いだったんだ。どうやって旦那様とお話しするべきか。さすがに奥様と仲良くおしゃべりしてますと言ったらぱっくり食べられちゃって私きっと死んじゃう。ううん私じゃなくて奥様が食べられないように王子様にはなれないけれど、奥様の話し相手ですからっ。

雨がまるで手でお屋敷を叩いてるみたい。

「リアリ」

声はすぐに雨の音がどっかに行かせちゃう。

「首が痛む?」

ズキズキするでもどうして。ここに何かぶつけたっけ?首全部がいたくなる躯体ぶつけたっけ、こんなに広くぶつかる物はあったかな。

「ごめんなさい私のせいで。でもすぐに服を着てちょうだいお願いよ」

服、ああそうだ私今なにも着てないんだ。服をつかまないのにどうして手が震えているんだろう。ただ着るだけなのに。

「着れないならわたしがしてあげる」

耳が燃えちゃいそう。

「手を挙げて」

何もできないのに奥様はもう服を着てどうしてもう着ないといけないの?それは旦那様が来て。 クマさんが倒れてるお腹がぺこぺこだから?違うあれは悪い魔法使い王子様に倒されちゃったから。違う、あれは

「足を上げて」

旦那様だ。

「もう片方も」

どうして旦那様が倒れてるんだろう。眠いのかな

「こうなってごめんなさい、でも」

違う。

「あなたが好きだから」

死んでるんだ。

「足、持ってくれる?」

あんなに大好きだった奥様の声はほとんど聞こえなくなったけれどそれだけは分かったから旦那様を机みたいに運んだ。冷たかった。

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