そして二人は幸せに暮らしました~その2~

窓から見ても木漏れ日の中にいる姿は川みたい、白い肌がキラキラ。いま手が震えているの、不思議今は腕が折れそうなくらいに窓を拭いているのに。奥様を見ていたらあと142個も窓があることなんてすっかり忘れちゃう(私が拭くのは3階だけだけども)。だって姿を見ながら拭けるなんてこと、この前の私は考えることすらできなかったんだもの。ぼんやりしていても窓を拭くだけなら出来るし、まるで教会にある絵みたい。ううん、あの絵がこの窓の風景に似ているんだわ、きっとそうに違いない、はず。ゾンナさんいないよね、来てないからもう少し見ていよう。「ちょっとここの汚れが取りにくいんです」ちょっとここの汚れが取りにくいんです。うん本当はとっても綺麗な窓なんだけどね。本当にこのお屋敷って私が掃除してていいのかな。何もしなくてもとっても綺麗なのに。やっぱり奥様がいるからこんなにも綺麗なんだわ。奥様が光に当たっているんじゃなくて、光が奥様から出ている。そしてそれがこのお屋敷全部を包み込んで、私のところまでくればいいのにな光。おしゃべりできなくてもいいけれども、こうして本を読んでいる奥様を見ているだけで私はとっても幸せなんですよ奥様。だけどもあなたは幸せなんでしょうか美しい奥様。
今日の夕食はスープとパンとお野菜だった。おうちで食べるものよりもフワフワでボロボロの部屋の中でも幸せな気分に浸れる。奥様はとってもすごいものを食べているんだろうなぁ、奥様と同じで光輝いている。だけども、もしかしたらこのパンかボロボロのお野菜か、が一部でも使われているのならばそれって奥様と同じものを食べているってことになるのかな。そうするとこれも光って見える。お付の人はいいなぁすぐ近くにいるから毎日何を食べているかわかるなんて。メキュベリーさんも羨ましい。台所に入れるんだから何を作っているのかわかる。岩みたいに大きいんだもの、ばっちり見えるんだろうなぁ。私も大きくなりたいなぁ。台がなくても全部の窓を拭けるようになれればいいなぁ。ゾンナさんはメキュベリーさんと直接話せるから台所に入ったことあるのかな。ということは何を食べているのかわかるのかな。やっぱりゾンナさんみたいにテキパキできないとダメなのかな。私お裁縫しか出
「なんですか」
「ひゃい?」私?こっち見てるし。どうして、あれ喋っちゃったの。どうしてだろう、なんでだろう、あれええと、どうしてなんだろう。なんでですか、なんで。なんて謝ればいいのかな、ごめんなさいって言えば許してくれるのかな、あれ私何か悪いことやったっけ、そうだおもっていたらそれが
「ごめんなさい、私の方をじっと見ていたので何か用かと思ったのですが、気のせいでしたね」
「あ、いいえ、じっと見ていたのは本当ですから」じっと見てたんだ気付かなかった。
「何かありましたか」
「あの、ゾンナさんは台所に入ったことがありますか」
「それがなにか」
「えっと、奥様が何食べているのか知ってるのかなぁって」
「それを知ってどうするって言うんですか?」
「どうするって、そ、いや、えと、ええときっと素敵な物を食べていらっしゃっるんだろうなぁって思ってその、つい、すみません」
「変なことが起きないように奥様の食べるものに近づけるのは料理人と、婦長のミセス・メキュベリー、奥様の侍女であるあの方、そして旦那様だけです。私は確かにあなたたちの責任者でありますし、ミセス・メキュベリーとお話できますが、お食事の内容を知ることはありません。以上でよろしいですか」
「はい!それでよろしいです!」怒ってるかな怒ってるよね、どうしよう、まずジッと見つめてたのも悪いし、変なことを聞いたのも悪いしどうしよう。
「皆さん、それぞれ食器を片付けてください。終わった人から素早く寝てください。皿洗いは手早く済ませるように。明日も鐘の音とともに仕事です」
まだパンちょっと余ってる早く食べないと。あ、でもまずは謝ったほうがでも教えてくれたからお礼を言ったほうが。
「あなた」
「はい」
「奥様に関して、一つ間違えると旦那様から折檻を喰らいますので何かをする前に必ず私に聞いてください。遠慮はしなくても宜しいです」
優しい人。
「早くしないとみなさんに遅れますよ」
結局食事のことは分からなかったけれど、これからはゾンナさんに聞いてもいいってことなのかな。今日も思わず変なこと聞いちゃったけれども嫌な顔しないでちゃんと教えてくれたし。私は窓から見ることしかできないけれど、あと廊下ですれ違った時。だけどもゾンナさんならもっと色々知ってるはず。うん、奥様のことはもっと聞いてもいいって言ってたし。ゾンナさん真面目な人だけど私なんかに優しくしてくれるとってもいい人。皆寝ちゃったけれどもゾンナさんはまだ寝床に戻っていない。明日の命令をメキュベリーさんに聞いているんだ。皆より遅く寝て早く起きるそんな私なんかよりもずっと忙しいのに頼っちゃっていいのかな。暗闇の中に奥様の美しい顔が見ている。木漏れ日の中で本を読んでいるお昼に見た姿だわ。本を読んでいる。本って一体どういうものかしら。私も字が読めたら奥様の事を考えることができるのに。どうすれば字って読めるの。お母さん、とお父さんは読めるかな?そうだ牧師様だわ。いつも神様の言葉を伝えてくれているし、本を読んでお話してくれているもの。牧師様のところに行けば字を読めるようになったのかしら。でも、おしごとで忙しいから牧師様のところへ行けない。ゾンナさん、は奥様についてのお話を聞いているのに更に字を教えてくださいって言うとあのそばかすの顔が真っ赤に染まるくらい怒る。どうせならば、奥様に字を教わりたいな。あの木漏れ日の中で白い肌のそばで字を教われたらどんなにか。

いつも水面のような廊下を今日はさらに鏡にしないといけない。輝いてる窓を何もないみたいにしないといけない。砂一つもない部屋をもっと綺麗にしないといけない。旦那様のお部屋は広くて大きくてなんだろうなんだかすごく硬かった。まるで大きな岩みたいだった。鳥のような紳士様(しつじっていう仕事らしい)とメキュベリーさんのお部屋は旦那様よりは狭いけれども広くてとっても綺麗。奥様の部屋はわからないけれどきっとここよりもずっとずっと広くて綺麗な部屋んだろうな。この家で一番大きくて綺麗なあの部屋よりも美しい。旦那様は奥様を愛しているってゾンナさんは言ってたから、このお屋敷でいっちばんの部屋。まるで教会の窓みたいないろんな光があるんだろうなぁ。そこをキレイにすることはできないけれど、私のおしごとが奥様の周りを綺麗にできたらもっと奥様は綺麗になるかな。窓を拭くときにいつもあの木漏れ日の中で本を読む。奥様とっても美しいけれど、私は廊下の仕事がとっても大好き。すれ違ったちょっとした時間しか見れないけれども、窓を外した近くの奥様は、、、、、、、、、なんて言ったらいいのかわからないけれど私の中でずっとキラキラしている。あの日見た時からずっと変わらない美しさ。あの奥様が動いて、私の目の前を、窓があるときっと絵なんだろうなと思ってしまうのにそんな奥様を目の前で私見られるなんて。――奥様はいつ見ても変わらないけれど、それを彩ってる素敵な服。私みたいなのはパンを我慢しても着れない素敵な服。私が見ただけでもいっぱい全部忘れられない、私をボーッとさせるの。それをいっぱい、いっぱい色んなものが。奥様はまるで全部の日と同じ数の服を持ってるみたい。
お日さま色の服
夕方のお日様の服
空色の服
雲色の服
雪色の服
ぶどう色の服
リンゴ色の服
ハチミツ色の服
麦を食べる小鳥さんのような服
冬に来る小鳥さんのような服
寒い時の葉っぱ色の服
お月様色の服
雷色の服
蝶々さん色の服
火色の服
魚さんみたいな服
麦を入れる倉庫の色
兎さん色の服
それを捕まえる道具色の服
若草色の服
麦色の服
「あれ」下のところが解けてる。ちょっとだから気づいていないのかな、今言うのは多分怒られるよね。奥様、には言えないからあのお付きの人?そうだよお付きの人が先に気づかないといけないのに、私だったらすぐに気づけたのに。奥様が着る物はあんな糸なんて出ていない。麦色の服なんだもの、私すぐ気づいちゃったのに。でも、解けていてもずっと美しい。もうすぐ気づいてよ下だって、足の部分なんだって。奥様はこんな服を着ちゃいけないし、この服はもっともっと素敵な服なのに。お願いお付きの人気づいて、奥様の服が。気づかないのかな。あっ
「ごめんなさい」
怒られちゃった。そうだよね、奥様の前で声を出すなんて折檻されちゃうからね。私だけならいいけれど、一緒に掃除してる人まで巻き込まれちゃうよね。そうだよね、ちゃんと気をつけないと。私は使用人で、奥様は奥様。同じおしごとをしてる人にまで気を回さないと。気をつけないと。折檻されなかったし、されないよね。あと、許してくれたから良かったけれども。
「このあと喋らないよう気をつけます。本当にすいませんでした。」
私のせいで一緒にお仕事してる人に迷惑はかけたくないし、その理由が奥様っていうのも嫌だ。そこらへんを気をつけて。でも、やっぱり解けた服は気になる。どうしよう。私がお話することはできないし、誰かに奥様へ伝えてもらわなきゃ。
「奥様の服が解けていたのですけれど、どうすればいいでしょうか」
「それは今日来ていた服ですか?」
「はいそうです」
「分かりました。私からメキュベリーさんに伝えますから」
これで奥様はまた美しく。ああよかったお仕事を丁寧にと思っていたのに服のことで頭がいっぱいだったもの。これでちゃんとお仕事ができる。私もゾンナさんみたいにちゃんとおしごとができる素敵な人になりたいな。そうすれば、奥様に少しくらいは近くに入れる、かな。
「よく、気づきましたね」
「えっ、あっはい。奥様のことはわかります」変なこと言っちゃった。私が奥様のことなんて。
「良い心遣いです。使用人はご主人様のことを第一に考えご主人様のことを知らなければいけません。あなたはきっと良い使用人になれますよ」
ゾンナさんに褒められると嬉しいけれど、なってる姿が見えない。空のお月様までいけますよと言われてるみたい。でも良い使用人になれたら。頑張ろう。明日はどこを掃除するのかな。頑張って明日もゾンナさんに褒められて、いい使用人になって奥様の光の中に入れるように。私ができることは掃除だけだもの。

目の前には服が。あの小麦色の服が。私の手には針と糸が。周りには私だけ。どうしてだろう。確かに、確かに私はお裁縫ができるって言ったけれども、言ったけれど、言ったけれども。もっと私より上手い人がきっといるはず。家でするお裁縫が得意で奥様の服を直すなんて。ずっと掃除ばっかりで良かったと思ってたのがいけなかったのかな。兎に角目の前のことを。触っていいのかな、裁縫しないといけないからいいんだよね。でも、私だよ。触ったらどうして触ったのって折檻される。大丈夫、大丈夫大丈夫。ちゃんとこのほつれた部分を直してくださいとちゃんとゾンナさんは言った。ゾンナさんだから間違えることなんてない.でも、私が聞き間違えたっていうことも・・・。こんなこと、もうないんだから、そうもうないんだから触っちゃ、え。
「ふぅ、、、、、、、、、、、、、、、、、、」奥様がこの服を着ていた。昨日。この柔らかい服を着ていた。ギュッとつかめば今来ている服がどんなに硬いかわかる。
「はぁ、、、、、、、、、、、、、、、」やっぱり奥様の服は素敵な服だった。いつまでも触っていたい、服でこんなにも楽しいなんて。ああ楽しんでちゃダメおしごとなんだから。これを、奥様が、着る。これを奥様が着る。それを繕うのは私。やっぱりダメだって私なんかが、きっと今誰かがいたら変に見えるはず。素敵な服とみすぼらしい私。まるでこの服を盗んだみたいでまさか繕おうとしているなんて。そろそろちゃんとしないと一日が終わる。せっかく私におしごとをくれたのに。あなたはきっといい使用人になれる。ゾンナさんが言ってくれたのにやっぱりこの子はダメダメだなんて言われたくない。これをきちんとやれば奥様の光の中に。頑張る。
「はぁふぅ」
針を刺すつぶっと音がして糸が通じる。赤い表紙の本を読んでいる奥様。反対側に針を刺して糸を通す。ふとお屋敷の方を眺める奥様。針を刺して糸を通す。ゆっくりと歩く奥様。刺して通す。突然止まって窓を眺める奥様。針と糸。お部屋に入る奥様。縫う。旦那様と歩く奥様。糸が。きっとあれは寂しそうな顔。解れていた場所が。眩しそうな顔をする。閉じていく。微笑む姿。綺麗な服に。戻ってるかな、奥様の事を思ってやったけれども。う、こうしてみると縫い目が結構わかってこれって結構不格好かも知れない。これ出すのってきっと怒られるんじゃないの。でも真面目にやってこれだから、私何にも言われなかったし、直してということしか。言わなくても私なら出来るって思ってくれていたってこと?これって折檻されちゃうの私。うん、うん、うん。分かんない。分かんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい。
「わからないですけどこれが精一杯やった結果です、どうでしょう」しばらくしたらゾンナさんが来た、見せた、どうだ。
「・・・まぁよろしいでしょう」ちょっと黙っていたけれどもそれって良い意味じゃあ無いよね。
「今日は早めに食事の準備でもしてください」最後の食事になりませんように。

きっと最後の晩餐だったんだろうなぁ。ああ皆と仕事がしたい。綺麗な部屋でひとりきりっていうのはなぁ嬉しいはずなのに、折檻されるって分かってたらこんなにも怖いものなんて。やっぱり無理だったんだよ、私に奥様の洋服なんて。折檻されちゃうかもと思ってたらやっぱりそうなんだよ。私なんかが光の中に入ろうと思っても入れなかったんだよ。服が解けている!解けていることに気づかなければ、あ、でも私なんかが言わなくてもいつかあのお付きの人かメキュベリーさんかゾンナさんが気づいた、私以外の人たちも気づいたはず。だから結局はお裁縫をすることになっちゃうんだよね。どうしてなんだろう、私なんかよりふさわしいはずきっと上手に服も直して。痛いのは嫌だなぁ、殺されちゃうのかなぁ。最後に奥様見たかったなぁ。服柔らかかったなぁ。廊下を廊下を拭きたい。遠くから見てるだけでよかったのにね。
「待たせちゃってごめんなさいねぇ。遅れちゃって」
「はいえべつに、だいじょうぶですすいません」お付の人だ。この人に折檻されるの、優しそうだけれども。あれれ。
「あなたがリアリさんね。名前のとおり可愛らしいお嬢さんで」
「あ、はぁ」怒られる感じじゃないのかな。
「お仕事の邪魔をしちゃいけないから早く済ませちゃうわね」
折檻を!
「奥様は非常にあなたの仕事を気に入っておられました、今回はその礼です」
「あれを、です、か?」
「そうそう。あの服ね。あなたに任せてよかったと言っていましたよ。直接言えないのを残念って」
「そんなあんなにぐちゃぐちゃだったのに」
「いいぃえぇ、とっても素敵だと褒めていましたよ。一生懸命が伝わるいい仕事でした」
「でも、他の人がやってればもっと綺麗ですし」
・・・・・・「奥様はあなたにやってもらいたかったんですよ。あまりそう言う物じゃないですよ」?「奥様はあなたにやってもらいたかったんですよ。あまりそう言う物じゃないですよ」?「奥様はあなたにやってもらいたかったんですよ」?「奥様はあなたにやってもらいたかったんですよ」!奥様は私にやって!!!!!!!!!!!!!!
「ちょちょっと待ってください、私ってどういうことですか。えなんで奥様が私のことを知ってるんですか!」?????????????????????????????
「ええとね、別にあなたを知ってるわけじゃないのよ。綻びを見つけたのが使用人だって聞いて、それで奥様がその子に任せましょうって言ったのよ。細かいところに気が付くからきっと素敵に直してくれるはずだってね」
あっきゃ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――「そうですか」―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あ。あの奥様が私のことを、私ならちゃんとしてくれるなんて思ってるなんて。あの仕事、光の中に私も入れることができたなんて、ううん入ってない外なんだけれど奥様の美しさのお力になれたなんて。私みたいなのでもちゃんとお役に立てるんだ、あの素敵な奥様の素敵な麦色の服を私が私なんかが。
「リアリさん大丈夫?ぼーっとしているけれど」
どこか行ってた。
「大丈夫です。ごめんなさい」
「お仕事大変ですものね。それじゃあねぇ、話すこと全部話しちゃったんだけど少し休んで行きなさい。お仕事はそのあとでいいでしょ」
「ありがとうございます」なんていい人なんだろう。奥様のお付きだからやっぱりこういう素敵な人じゃないといけないのでしょう。私もこの人みたいに優しい大人だったら奥様とお話することができたのかな。
「あのすいません、ひとついいでしょうか」
「いいですよ、なんですか」
「えっと、奥様は人と喋っちゃいけないって聞きました。あの、旦那様が奥様のことを好きすぎるから。って。で、あの、あなた、ええとお名前なんでしたっけ」
「ルクベスといいます」
「ルクベスさんが奥様のことをずっと見ているからできないって聞きました。でも、ルクベスさんとっても優しいから、なんでかなって。えっと、えっとそう言う感じです」
「旦那様のいない時に奥様を自由にさせてあげればいいのに、というわけですね。リアリさん」
「はい」
「それはいけないんですよ。あなたの言いたいこともわかりますが、私はあくまで旦那様に雇われておりますから」
「でも、いない時に」
「誰がいつ見ているかわからないんですよ、ここは」
「そんな、でも今は誰も見てないですよ」
「そうでしょうか」
え、見てるの?誰、しつじさん、メキュベリーさん、旦那様?
「奥様はこの屋敷の中だと常に見られております。ここの主人の妻ですから。注目を浴びているわけですから。使用人は旦那様以上に注意を払っております。私がいなくても自由はないんですよ」
「でもそれじゃあ」
「その代わりに私が奥様のお話相手になっているわけなんですよ。私ならば奥様に危害を悪い影響を与えないだろうということなんでしょうけれども」
なんか違う。もっと奥様のことが好きなら。
「奥様もそのことを理解しております。自分のせいで破滅しても良い人なんていないと分かっているのです」
「破滅」破滅。そんな言葉牧師様のお話でしか聞いたことない。神様が人に怒って。
「あなたは来てあまり日が経っていないでしょ」
「はい」
「ですからよくわかっていないのですよ。旦那様を見たことは」
「ちょっとだけ」廊下をすれ違って、なんだか雨が人になったみたいな。
「これからよくわかりますよ、旦那様と奥様のこと」

ルクベスさんに言われてから、旦那様のことをずっと見ていた。けれども雨みたいってことしかわからない。前からいる人たちは旦那様の周りのお仕事ができるみたいだし、もっと頑張れば出来るのかな。まだ窓を拭くくらいしか出来てないけれど。雨、お母さんが早く家に戻りなさいって言って急いで走って家まで戻って。重たい香りが周りいっぱいに広まって黒い雲が頭の上まで来て、水が周りに増えていって。奥様だ、今日も美しい。あの服を着てる。この窓がなければもっと近くに行けるのに、でもそしたら奥様にもルクベスさんにも迷惑をかけちゃうんだろうなぁ。絵の中には入ることはできないけれども。けれども。こっち見た?気のせいだった、恥ずかしい、私なんかを見るはずないのに。真面目に窓を吹かないといけないってことね。うん、今度はルクベスさんがこっち見てるけど何かあるのかな。鳥さんでもいるのかな。それとも仕事をしないで見てることがわかったとか。また奥様が見た、今度はわかった。間違いない。そうきっと。ありえない。でもだって。ずっと見てたからわかる。でもそんなこと。夢? 勘違いの方が。奥様が私に笑いかけている。あの目、青い青いめに落ちちゃいそう。空に落ちる私。
ゴツン
「ぅぅぅぅっぅぅ」ここからだと窓から落ち散るだけだよ。痛い。見てるとしたらこれを見られちゃった?
「     」、
口を動かして、私に。声に出さないで私に。まただ。ちゃんと見ないとなんて言ってるのかちゃんとちゃんとちゃんとわからないと。ええと
「だ・い・じょ・う・ぶ?」

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