そして二人は幸せに暮らしました~その10~

「どうなんでしょうこれは」

「よく似合っていますよ」

「外に出るときの服も似合ってないと思うんです、それなのにこんな」

「何事も悪く考えすぎです。さぁ背を伸ばして優雅に誰に話しかけられても笑って」

舞踏会だなんてそんな日が来るとは思いもしなかった。

「では行きましょう」

奥さまがいっちゃう。よし行こう。こんなきれいなものは私に似合っていないのに奥さまはおっしゃる。「とっても綺麗ですよ」でもやっぱりいつものお仕事の衣装の方が、きれいな服でもこ外行の服でせいいっぱいのに合う服なのにこんなドレスが私に似合う訳はないんです。ああー、やっぱりすごくきれいで大きなお部屋だ。こんな場所、私がいて良いはずないんですよ奥さま。おしゃべりしてる人踊っている人みんな貴族様なんだろうなぁ。そんな中私一人みすぼらしくなっていないでしょうか。

「リアリ、大丈夫ですよあなたは」

「これはこれはレビンの領主様お初にお目にかかります私は」

話しかけられた。私にじゃなくてもこれはびっくりする。いきなり話しかけて良い物なんだ舞踏会って。すごいなー私じゃ話おわるまで待っちゃうな。

「ストウィッジ伯爵でございますね」

「おお。私の名前をご存じで」

「ええ勿論、お噂はかねがね」

「あなたのような聡明で美しい方に覚えていただけて光栄でございます。新領主のご就任の時は直接お祝いできず申し訳ございませんでした」

「そんな、あくまで父の体調が良くなるまでの代わりですから」

「ご謙遜を、素晴らしき手腕を発揮しているとの話ですよ」

「あくまで話だけですよ。仕事をきちんとするだけでも一苦労ですから」

こうして、貴族様たちとお話をする奥さま。奥様ずっとずっとこうなることを考えていた。今こうしていることは奥様が小さい娘さんだった時から考えて勉強してきて頑張ってきたことが。だけども、私はただ奥さまの後ろについてきただけだから本当にいては。おっといけない、伯爵様が私を見ているとうことは。

「お嬢さん」

本当に私に話しかけてくるんだ。

「あなたも領主様が素晴らしい方だと思いますよね」

ぇっぁっ落ち着いて、落ち着いて、一つ呼吸をして。

「ええ、奥さまはとても素晴らしい領主様ですわ」

笑顔を忘れずに。

「まぁあなたまで」

「私は嘘をつくことができませんから」

「ははは素直なことは良いことではないですか」

「ええ、それはそうなのですけど。なんだか恥ずかしくて」

「奥様、本当のことなのですから」

侍女はこんなに奥様と話していて良いものだろうか、舞踏会という場所でいいのだろうか。

「お嬢さん、ご挨拶が遅れました、フルツ・ラデン・フォン・ストウィッジでございます」

これはもう私は名前を言うしかないですよね。本当に言っちゃっていいんですよね、昨日からずっとこれのせいで寝れなかったんですけれど。奥様が私を見ている。分かっております、奥さま恐れ多いですが私は言われた通りにさせていただきます。

「私はリアリ・ランドスティンでございます」

どうですかどうでしょう。

「どうぞ今後ともおみしりおきを。それでは」

それだけ言うと伯爵様が別の方のもとへ行っていく。

「ここは綺麗でしょ」

「あの、どうだったんでしょう」

「どうって」

「私ちゃんと言えましたか」

声を小さくしなきゃ。

「農民の私が家名を」

「名前だけ名乗っても家名も聞かれますから、こうするしかありませんよ」

農民がこんな場所に来てはいけばいけないということは分かりますけれど。

「でも、侍女ですじゃダメなんですか?」

「それでは駄目なのです」

一体何がダメなのだろう。

「もっといろんな方とお喋りしに行きましょう」

奥様は黙っていてもいろんな方がお喋りするために来る。奥さまは自分でも行く。それでお仕事するためのじんみゃくを作るという物らしい。だから本来は私なんて黙ってればいいはずなのに、それをしたらいけない。だって何のために舞踏会での立ち振る舞いを教えてくれたのか分からないんだから。私は精いっぱい頑張って精一杯お話をしないと。挨拶くらいだけれど。奥さまが私が挨拶をできるようにしてくれるからしなければおけない。一言二言だけど、これはありがたいことだけど、本当は奥様がおしゃべりをしているのを見ているだけで良いのです。ごめんなさい。

「これは領主様お久しぶりです」

「アラトル伯爵様こんばんは。このたびはお誘いいただき誠にありがとうございます」

この方が今日の人。確か前に会ったことあるよね、よし粗相をしないように固まっていよう。

「いかがですかな今宵の宴は」

「とても素晴らしい宴ですね」

「こちらのお嬢さんは」

思ったよりも早く私に話しかけてくるなんて、さすが主催している貴族様。変なことを言わないように。

「あ、私は奥様の」

「わたしのお相手をしてくださっているミス・リアリです」

おっとっと。奥さまが、話を。

「どうも初めまして、リアリ様ライル・セフ・ド・アラトルざいます」

初めまして、はじめまして?あれ、お会いしたことありませんでしたっけ。忘れられている、私普通の顔ですし。それとも私が誰かと勘違いをしている。これはとんだ失礼をああ挨拶しないと。

「どうもはじめましてアラティア様。私はリアリ・ランドスティンです」

何だかとても見られているような気がする。この娘は侍女でしたな何故こんな所にとか。そうだもん私が家名を名乗るなんて、リアリはリアリですから、やっぱり私には駄目なんじゃないですかきっとそうです。先ほどまでははじめての方ばかりでしたが、この方は

「ランドスティン、ランドスティン。ランドスティンと言いますとお母様の」

「ええ」

「なるほど。いやてっきりお父様しかいらっしゃらないのかと」

「隠居していらっしゃったみたいですので」

「なるほど」

えっ、ランドスティンって何かあるんですか。大丈夫ですよって言っていましたけれど、本当に大丈夫なのですか。お母様の家名なのですか。いんきょって何ですか。大丈夫なのですか、奥さまですから信じよう、うん信じなきゃ

「もしよろしければ私の息子と踊っていただけませんか」

「私がですか」

踊る、ここで私が?

「ええ。もしかして他に気になるお方でもいらっしゃいましたか」

「いえ、そのような男性の方はまだいらっしゃいません」

嘘はついておりません、気になる男の人はいないんですから。

「ただ、私このような場所ははじめてでしてうまく踊れるかどうか」

きっと不可能です。

「あら、リアリあんなに勉強したでしょ」

そうですけど。

「大丈夫ですよリアリ様。息子は踊りが上手くてねリードがきちんと出来ますから」

これはどうしても踊らなくてはいけなくなっております、どうしましょう踊ったほうが良いのでしょうけれど私なんて。

「それは素晴らしいですね。ただ、それ程お上手なのでしたら私よりも良い人がいるのではないでしょうか」

「いいえ、貴女のようなチャーミングな方なら息子も踊りたいでしょう」

「リアリお受けなさいな」

あの目、お受けした方が良いのですか。それは分かっておりますけど、でも何のために奥様に踊りを襲ったのか分かりませんものね。これ以上断ったら奥様にご迷惑をおかけしてしまいますものね。よし頑張ろう、もうそれしかない。

「それでは、一緒に踊らせていただきます」

頑張ろう。息子さん、ご子息様がやってくる。こんな人が私と踊るの?どうして。手を引かれ1,2,1,2と手が引かれる。次はあそこその次があっちに足を置くここで回って、右足左足。

「どうですか」

「まるで踊りの精霊様ですね。不思議な気分ですわ」

「いいえ、ただ案内をしているだけでリアリ様が自分で踊っているだけなんですよ」

「踊りだけでなくお褒めになるのもお上手だなんて、きっと女の子からよく話しかけられるのではないのですか」

「そんなことありませんよ」

 

外に出ると少し涼しい。部屋の中は音楽でいっぱいだけどここだとこもった音と風しか聞こえない。こういう所のほうが落ち着く、あー良いなぁ。今畑は麦が真っ直ぐ育ってるのかな。見たいなぁ。

「リアリどうでした」

「上手に誘導していただいたおかげで転ぶこともなかったです」

「あの方の力もありますがリアリも十分上手でしたよ」

「そうですか、そうだとしたら奥様が教えてくださったおかげです」

奥様が教えてくださったおかげでご子息様に恥ずかしい思いをさせることはありませんでしたし、何より奥さまが私の手を握って踊ってくださるときはええと、なんかこう胸がドンドンって凄かったですから。でも奥さまはマナーを教えてくださっているだけですからそんなこと言ったらダメでしょうね。

「にわか教師でしたけどね。舞踏会は長らく行けませんでしたし」

それはあの領主様がまだいらっしゃったとき。それはダメですせっかく楽しい場所なのにそんなことを思い出しちゃダメです、何か楽しい話をしましょう。ええと、何だろう。

「リアリ、今日の舞踏会あなたはどう見られたかわかりますか?」

「どう?」

どう見られたかと言われても。あっ奥様といっしょにいるな。くらいしか思われないはず。あっ農民の娘だ、なんてみすぼらしい娘だドレスが似合っていないぞ、とは思われてないはずだけど。

「皆さん優しくしてくれましたけど」

「そうです。皆様優しくしてくださったでしょ」

「はぁ」

あっ、分かった。

「家名が、その奥様の」

「ええ、その通り」

「だから、あの、もしかしてですけど、私奥さまの親戚かと」

「ええ、その通り」

「あの、ここに農民が来てはいけないということは分かりますけど、わざわざそんなことにしなくても。もっと他あったのではありませんか」

もし、これが奥さまに詳しい方の耳に入ったらそんな娘は存在しないって分かっちゃうそしたら大変で。

「大丈夫です。ランドスティンは最早誰も気にすることの家ですから。再興しようなんて話が無ければ気にも留められないでしょう。ただ紹介で使うだけなら丁度良いのです」

「そういうものですか?」

「そういう世界なのですよ。大丈夫、最早ランドスティンの家について知る者は父しかいませんしその父の耳に入ることはありませんから」

それは、良かったというかそんな理由で私に大事なお母様の家の名前を付けて良かったのでしょうか。ただの侍女なのに。家の名前だけでそう思われるだろうか。おかしいなと思う人はいないでしょうか私みたいに名乗ろうと思ったら誰でも名乗れるのに。それに

「あの、チーリーさんは大丈夫なんですか、だって私を連れて切れた方ですから。すぐそこにいるに耳に入ったら」

「大丈夫です。控えてるチーリーに届く声ではないですし言いふらす必要のない内容ですし。仮に聞こえても執事が言いふらしても何の意味もありません」

そういうことなのかな。こうおっしゃるのだから大丈夫なんだろうけどあまりわからない。

「大丈夫です、リアリは今どこから見ても貴族のご令嬢にしか見えませんだから安心しなさい」

綺麗な服を着て綺麗なお化粧をしても結局私は綺麗じゃないのですから。村の花嫁さんの方がきっともっと綺麗です。よ

「貴族らしさというのはその振る舞いで決まります」

そういうことですか。じっと見ている私を見るまつ毛が長くてきれいな目、それに私が映っている。

「あなたはとっても素晴らしい人、だから私が少しマナーを教えるだけで立派な貴婦人になれるのです」

「そう、なんですか」

「ライドルフ様なんて、貴女を子供の夫人候補として考えていましたし」

「えっいつのまに」

貴族様のお嫁さん、私が?えー私が?

「舞踏会というのは貴族が縁を求めてくる場ですから。年若い男女を躍らせるということはそういうことになりますから」

「そうなんですか。いやでも、いきなり会っただけで」

「実際の所、良いと思った部分があれば家柄はどうでもいいとお考えの方ですから。頼る必要のない家ですからねあの方は」

あれはただ楽しく踊っていたわけじゃないんだ。そうだよね踊りたいだけだったら息子さんがいってくるはずなんだからお父さんが言うはずないんだよね。そうだ、うんそうだ。

「あの方、目の前の令嬢がまさか農民出身の元使用人とは思いもしなかったでしょうね。その時のリアリの顔なんて見たこともないでしょうけど」

あっそっか、貴族様は一々見ないんだ。私は見るけど。大事な話の時は出されるし、ああなるほど、なるほど。

「ここには、農民リアリはいません、貴族の娘リアリ・ランドスティンだけです」

考えてみるとあの時まで私はずっと奥様としか見てなかった。侍女と奥さま、どんなに好かれても私はそこから出てはいけないのだと思っていた。でもそれを壊した買っていたのは奥さまだった。奥さまにとって私は同じだったんだ。そう考えると、なるほど確かに侍女だってあまり思われたくないはずです。侍女の仕事はするけど心は奥様と同じで。あの夜以降私は奥様のような貴婦人になれるよう頑張ってるけど。どうなんだろう、きっと貴族様だったら今みたいなことは大丈夫なんだろうけど、うん、・・・私には駄目だった体が痛くなってきた。

「あの、すいません、動いちゃ」

「リアリ様申し訳ございませんがもう少しそのままで。すぐ仕上がりますから」

「はぁ」

奥様はこれを涼しい顔で出来たのだから、まだまだだ。「もう宜しいですよ」と言われるまでがとっても長く感じた。

「どうでしたか?」

「とっても痛かったです」

「たとえ少しの時間でも動けないのは大変ですからね」

「そうですね」

少しだけだったんだ。もう一日くらい経ったかと思った。

「これで絵が出来上がるんですね。きっと綺麗な絵になりますね」

「ええ、貴女は今日とってもかわいいですから」

「あ、私じゃなくて、じゃなくて!ええと奥様も私もきっと綺麗な絵になりますね」

「そうだと良いですね」

「絵はあの、一杯飾られているところに?」

「そうですねいつかはあの歴代領主の隣に飾られたいですね。きちんと領主になれるかは怪しいですけど」

「なれますよ、奥さま。だって血の繋がっていないゴルドン様が領主になれたのですから」

「ありがとうリアリ。ではお父様から譲っていただけるまで部屋に飾りましょうか。あなたの隣に並べて」

私の絵は部屋に飾るのですね。隣り合わせで。でもいつかは、私の隣から離れてしまい、旦那様とお父様の隣に。

「あの方はライドルフ様の肖像画も名だたる方々の肖像画も手がてるというはなしですからきっと良い絵に仕上がりますよ。下書きは見ましたか?」

「いいえ、恥ずかしくて」

だって、私のことをちゃんとした画家さんが絵にするだなんて。綺麗な絵になりますねと言ったけれど、私の絵はできても絶対見れない。そんなすごい人のならより一層。

「きっと素敵な絵になると思います」

「ええ、並べられる日が楽しみですね」

お弟子さんの馬車でお帰りになる画家さんをチーリーさんと一緒にお見送りをした。チーリーさんは、執事というお仕事は貴族様がなる仕事でそんな人の隣で並んでいたら私も同じく貴族出身の侍女に見えるのでしょうか。奥様が私を自分と同じ立ち位置にしたいと思っているなら、私はそれに答えないといけません。侍女の仕事を頑張れば、きっとリアリは農民の娘だけど貴族と同じように奥様の側にずっといてもいいだろうと思ってくれたら。そうすれば、奥様も私のことを色々考えなくても済むしお給金もお父さんお母さんに一杯あげれるし。麦、今どうなってるんだろう。

部屋に戻ると思わず麦の話をしてしまった。

「大好きな麦畑を見たいですか」

「はい、お休みの日が今からでも楽しみです」

奥様は何か考えてるなぁとおもったら「そうですね」とパチン手を鳴らしたのでちょっとびっくり

「一緒にあなたの家に行きましょう」

私の家?

「農民の視察は行きますが、実はまだリアリの家にはまだ行ったことないのですよ」

えっと思っている間に隣室のチーリーさんを呼んで。

「農民を視察して状況を確認したいのですけどいつなら空いてるかしら」

「奥様、11日後ならいかがでしょうか」

「それではその日に予定を入れてください」

「かしこまりました」

あっという間に決まってしまった。そしてあっという間に来てしまった。その間に何があったのか覚えているけれど覚えていない、どうしよう。

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ目をつぶったら雷の音。いつも聞いてる馬車の音が昔聞いた時みたいになる。ただその時と違うのはとてもきれいな馬車で、隣には奥様がいるということ。これから私の家に行く、言ってどうするんだろうお話をするのかな何を話すのだろう。チーリーさんはこれが視察じゃないことを知っているよね。そういえば私が侍女になったことをどう思っているんだろう。魔法使いの領主様の時からすぐそばで執事していたのだから、誰よりも一番知っているはず。誰よりも知っている。すぐそばで。いつも一緒に。どうして気づかなかったのか、それはずっと領主様と一緒にいたからで私と奥様とはほとんど会わなかったからで。今は奥様のすぐそばにいる。領主代理になったから、それは。変なことはしないでいよう。もう変なことになっているけれど、私はあくまで奥様に気に入られたから農民なのに侍女になれた。決して貴族になろうと思っているわけではないし奥様の・・・。

ずっと、気にしてなかった。これから侍女に、奥様と対等になるにはもっと広いことを学ばなければ、広く見ないと。

金色が見えた。懐かくて帰ってきたんだ、でも今日はいつもみたいにお父さんお母さんの子供リアリではなく、奥様の侍女貴族のリアリ・ランドスティンとしていなければ。もしチーリーさんが思った通りの人だったら。今はそれを考える場ですか。せっかく奥様が家に来てくださったんだからそれを考えよう。

奥様はとっても楽しそうに見ている。どう思っているのかな。話しかけようかな、やめておこう。今楽しそうな奥様を見ているだけで楽しい。

馬車が止まる、奥様とともに外に出る。ずっと麦畑を見たままで。私が小さいころから見てきた綺麗な綺麗な金色。まるで奥様のようにきれいな麦畑。

「これが貴女が見ていた麦畑」

「はい」

「とても綺麗ですね」

「はい、そうなんです」

不思議と気分が落ち着いています。ええわかっています私はずっと勉強してきましたから今の私はこの気分が何なのか良く分かる。嬉しすぎて良く分かっていない。きっと今日の夜にとってもうれしくなるそして素敵な夢を見る。

「バルさんが言ってた通り、そんな綺麗な格好をして、本当に領主様のお仕事をしているんだね」

「う、うん」

バルさん、この前配達しに来てくれた時かな。昔から知っているおじさんだからお父さんたちに話しても変じゃないけど。何だか恥ずかしい。

「初めまして」と奥様が挨拶をする。私のお父さんに。奥さまと初めてお会いするからかなんだかすごい変、固くなっちゃって気まずいみたい。私の心配してくれるのは嬉しいけれど。

「確かにリアリさんは可愛らしい失敗もしますけれど、真面目に仕事をしてくださって大いに助かっております。とても良い子に育てていただきありがとうございます」

なんて、言って、お父さんもお母さんも頭も下げて、嬉しくて恥ずかしくて恥ずかしい。

奥様はお父さんとそのまま麦のお話をしている。今まで考えていなかったけれどお父さんはちゃんと考えて育ててたんだ、それはそうだよね。今年はこれだけ育てて納められる量はこれくらいになる。ちゃんと考えないとわからない、奥様のおかげで私は綺麗だけだった麦のことが分かった。チーリーさんの隣で聞いていると、ちゃんと立派にならなければ仕事のお手伝いをしなければと考える。

「チーリー、昨年の税は」

「14でございます奥様」

「この量ですと、15にしたとしても残るのは昨年と同じ程度ということになりますね」

「ええ、領主様確かにそうなんですが」

あの広い畑一杯に麦が出来たら15取られる。なるほど、こうやって見て決めるのですね。確かに今年は麦が一杯だ、いつもーはパーて感じなのに今はうわああああってくらいに麦が広がっている。去年もたくさんの麦がお屋敷に運ばれてきたけど今年はそれよりもいっぱいくるんだ。増えた分お父さんにあげたいけどきっとそれはダメなんだろうなぁ。やっぱり良く分からない。

お仕事の話が終わってしまうと、これから別の畑を見に行かないといけないので立ち去らないと。聞いている間は恥ずかしかったけれど、寂しい。「じゃあお母さんお父さん私行くからお休みの時にまたゆっくりお話ししよう」

「あ、ああそうかいリアリ元気でね」

何だか変何か隠しているみたい。

「どうしたの、もしかして私何かしちゃった?」

変なお母さんお父さん、ずっと黙ってたら口をあけて、何だかいやな気分。何故かここで聞きたくない、大好きなこの麦畑じゃ。まるで聞かれたくないような小声で

「私たちも噂で聞いただけなんだけど、本当に噂だけなんだけど、奥様が前の領主様達、ええと旦那様とお父様を殺して領主になったっていうのは、本当かい?」

何もわからない。

 

 

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