そして二人は幸せに暮らしました~その6~

物心がついた時が生まれるという事ならわたしは生まれた時から自分が美しいという事を知っていた。父は落ちぶれたが自尊心だけは上流の貴族だった。耳に刻み付けられた声がこだまする。お前の美しさは国王陛下ですら虜にするだろう。まだ赤子だった頃からありとあらゆる作法や才能を身に着けさせた。何故かという問いに帰ってくるのはずっと同じ答え。嗚呼わたしは美しいからこのようなことをしている。考えてみるとあまりお金はなかったと思うが、父は何とかわたしを王にふさわしい女性に仕立て上げようとした。父はありとあらゆる社交界やサロンに連れ出した。貴族になるべく上流の人間に気に入られるように少しでも目立つようにわたしは飾り付けられた。目論見通りわたしは男どもにちやほやされた。美しい宝石を見るように肉体を思い浮かべながら。まるで犬か蟻のように見えてその後すべての男への興味が消えうせた。女は女で浅ましい生き物である。わたしが男の期待を受け美しく成長すると美を授かっていない人間は自分ではなくわたしを恨む。最大の敵である己の肉体からは目をそらす。自分は悪くない悪くないのよって。自分は綺麗なままでいたいそして自分が美しくないと言うことを決して認めたくない、何て愚かな。わたしは男を集めるのに動くことは必要ない。ならばその間に動けばいいだけの話であり。美しくなく怠惰それでは非業の死を遂げたとしても決して振り向かれることはないでしょう。

わたしは美しい、だからこそ死者になった。この世で女が生きるには男に従わなければいけない。特に貴族の娘となれば。父が出世するための道具として結婚してからは夫の人形として。わたしが見てきた世界は全てそれだった。見てない世界ではどうやら違うらしいと知ったのは女と娘の間の年。名をよく知られている貴族議員がある提案をした。それに対し女性貴族が強い反対をしたという。狭い世界では王のようにふるまっている男に対し貴族といえども馬鹿にされる女性が反論したのである。わたしはその話に強く興味を持ち舞踏会社交界に行くたびなんとかその話題を聞けるよう交流した。提案された時点で決定しているような状況だったらしいが一転して女性貴族の意見が認められ提案は却下されたという。またある時、商会を立ち上げて大きく名をあげている女性商人がいるという話を聞いた。商人の世界はよく知らないが、そちらも男が王のようにふるまうと聞く。しかし、女性商人は才覚のみで男を蹴散らしていったという。あの時代、わたしは男の下にいなくても生きる事は出来るという事実を知り、世界が終わったような気分だった。本当の死者になるまでわたしは生ける死者になるしかなかったと思っていたがそうではない生き方をしている女性たちがいると、暗く淀んだ沼の人生は終わり朝の陽ざしが差し込んできた気分だった。気づいたら、自分の人生を描いていた。父のような没落貴族ではなく、もっと上流貴族のように広い世界の中心に立ち。いえ、貴族であることを捨てて商人になってみよう。今はわたしが見たこともない遠い遠い東の国へ行けるという。船に乗り込んでこんな何も見る事のないとこから飛び出して。わたしの考えは色んなところへ飛び立った。貴族に商人もっと沢山の仕事の話も集めた。芸術家、役者、農民、音楽家、詩人。わたしは群がる男たち恨む女たちよりずっとずっと若い。なんにでもなれる、わたしの世界だとなんにでもなれた。わたしはずっと怖かったのだ、貴族の娘であり続ける自分の人生が。

だが、今わたしは貴族の妻である。なぜ男に負けない貴族にも商人にも、もっと別の仕事にもなれなかったのか。入り口がなかった、ただそれだけの話である。わたしはずっと貴族の娘であり、男の道具になるしかない人生を歩み続けてきた。今のわたしはその人生を歩む方法しか知らない。別の生き方を知ってもその生き方になる方法は知らない。男に逆らう女性なんて毒以外の何物でもない。商人になるという事は庶民になること、没落しているとしても貴族がそんなことになるのはご法度である。知らないならば知識を得ればよいと人に頼り、それでも駄目ならば書がある。一人では手に入れることが出来ないので男達を使い、商売や政治にかかわる本この国の全てを知れる本を手に入れた。色々知識は付いた、しかしわたしはそこでようやく気づいた。この国で女が生者になる知識なんてある訳がないと。そんなものは男によって潰され思いつきもしない。わたしが聞いた女性たちは皆自分で考え自分で動いたのだろう。では、わたしも一人で考え動けば良いのか。いえ、どうやって動けば良いのか、どう考えれば良いのかが分からないから知識を探していたのだ。一歩も動けなくなった。わたしの世界を終わらせた、終わらせたと思った女性たちはきっと生まれた時から必要な知識があったのだろう。いえ、知識よりもきっとどうすればいいのかと言うのが分かるのだろう。わたしにはそれがない、その代わりにわたしにはこの美貌があった。よりにもよって美貌しかないのだ。それでもわたしは生きたかった、動かねばならぬと。父は没落貴族だからどうにでもなると、所詮自らを尊ぶ心しか持ち合わせていない男だと。だけど、だけどもだからこそわたしは何も動くことが出来なかった。わたしはこの顔で生まれて来た時点で人として生きることは不可能なのだとついに知った。

一度頭が止まると本当にわたしは死んでしまった。男がわたしに群がる光景を見るだけの生活。一瞬サロンで貴婦人たちがどこかの奥様が子供を死産してしまった話を聞いた時再生した。その子供はわたしの一人だろう。生まれた時から死んでいるわたしは神に嫌われたからここにいるがきっとその子は神に愛されていたのだろう。かつて読んだ小説のように死者は己の不幸を叫ぶために蘇り塵へ帰る。暗い暗い闇闇を漂っていると時折一つに集まりわたしの姿を象ることがある。その時にわたしは地方貴族の男を見た。領主をしているこの男は誰よりもわたしの事を気に入った。遠く離れた田舎だが平和で作物が多く取れる土地を所持している。そのため都の人間よりも財を成しているようだった。父はわたしを王にささげるという途方もない夢をあきらめ、没落貴族から地方と言えども領主の義父という地位を手に入れることにした。いくらかの大金が父に支払われたらしいが興味ない。

わたしが人生で最も自分を称賛したいのはこの男の本質をきちんと見極めていたことだろう。あの、生者の女性たちを知った時のような小娘だったらこれで解放されると思ったのだろう。しかし、目が男たちといえ父のように父よりもわたしを見ていた。父は道具、男達は欲望を叶える物として扱っていたが、領主は完璧なまでに宝石と扱っていた。ここで初めてわたしはいままではまだ人間として生きていたということを知った。

連れて来られた屋敷は大きく綺麗で余生を過ごすのに相応しい。領主は本が好きと言うわたしの情報を知っており大量の書籍を揃えていた。父の元でも男たちの元でも手に入らなかったような物もあり、死ぬまで過ごすのにこんなに相応しい場所はない。

屋敷に入った時から強い違和感がした。使用人が挨拶をすれどわたしを見ることがない。その眼は必死にわたしを見ないようにしている。その中から唯一わたしを見ている女性が現れた。ルクベスと名乗ったその女性はわたしの侍女だという。わたしより年上だろう。彼女はルクベスと名乗った。サロンの香りがする、恐らく貴族とまでは行かないまでもある程度しっかりした家の出なのだろう。部屋の中で領主に告げられた。今後この屋敷では領主とルクベスとしか会話してはいけないと。今までも使用人とすら話したことがない、むしろ貴族で下等な人間とされている使用人に話しかける者なんているのだろうか。特に何も思わず了承した。しばらくは本を読むだけの生活。詳しい訳ではないが領主と言うのは普通妻をあらゆる所へ連れ出すようなものではないのだろうか。全くこの屋敷から出ることはない。屋敷に誰かが訪ねてきた時も必要最低限のあいさつを済ませるとすぐにわたしは離された。ルクベスと話をした。この女性は領主によって囚われの身になったわたしを可愛そうにと思っている。人間的には優しい人物であるけど少しばかり大げさに物事を考える性質らしい。屋敷は執事のチーリーが管理を任されている。全てチーリーの思うままだったがわたしという存在はまるでいないかのように何一つ干渉されることはなかった。

ある日、わたしは使用人の少女が床掃除していることに気付かずぶつかってしまった。貴族が通りかかる時は使用人は隅で通り過ぎるまで待たなくてはいけない。それが常識であり、気づかずに掃除をしていた方が悪いとされるのだろう。しかし、先に廊下にいたのはその少女でありぶつからぬようにするのはわたしの役目。その場で謝罪をすると顔を真っ赤にして謝罪を返してきた。反応を見るとまるで謝らなければ縛り首にされるとでも思っているのだろう。穏やかに諭した。わたしが悪いのだから。少女はわたしを妖魔か何かと思っているらしく、落ち着いてもまだ私を怖がっているようだった。ふと考えてみるとあまり若い人とは話す機会がなく、その瞬間は特別新鮮であった。

暫くすると少女は死んだ。殺された、領主によって。きっかけはルクベスが領主にわたしと少女の話を告げたところから始まる。ルクベスとしては、何かないかと聞かれ思わず喋っただけだそうだ。諭しただけなので問題はないと思ったのだそうだ。しかし、領主は激怒した。わたしを呼びつけ使用人を集め、屋敷の人間が全員見る中で少女を折檻した。拷問とまでは行かないまでもそれを髣髴とさせる酷いものだった。絶望した。わたしが生きたせいでこのような目にあってしまったのだ。わたしの不注意のせいで起きてしまったこと彼女を許してわたしを折檻して頂けないか。返事はあの目だけで十分だった。より一層折檻は酷さを増した、大事な大事なわたしが庇ったのだから。当たり前である。まだ何とか生きている状態で解放された。手当をしなければいけない。しかし、わたしには何も出来なかった。翌朝少女は庭で見つかった。部屋の窓から飛び降り強く頭をぶつけたという。粗相をしたせいで折檻を受けその苦しみでということなのだそうだが、あの体では飛び降りるどころか自ら立ち上がるなんて出来ないだろう。また領主は折檻を終えても怒りは収まらない様子だった。そして死を知った時のあの顔、悲しみでも驚きでもない嘲笑でもない、興味がないという態度ですらない。あれは、虚無だった。起きたことに何も思わない、扉を開けると部屋に入れるようにその現象に何も思う事のない。それを見て、わたしは、死者として生きたことを後悔した。少しでも、動いていれば。全てわたしが招いたことだ、あの少女はわたしを怖がっていた。領主が恐れるようなことは何もなかったのにこれでは本当に妖魔ではないか。そんなことを思うわたしに自分で驚いてああ、恐ろしいことが起こってしまったのだと分かった。

しばらくするとわたしよりルクベスが恐れられていることに気付いた。皆知っているのだ、発端は彼女だと。もし、わたしに粗相をすればすぐさま領主の耳に入る。あの少女と同じになるだろう。誰もがわたしを死と同一にして避けた。それは新しい使用人が入っても伝わった。ただただ恐怖として。わたしは本当の死者、命を絶とうと思ったがそんなことすれば生きている物はいなくなるだろう。生ける死者本当の意味で何も考えることなく何もせずこの身朽ち果てるまでひたすら日々を過ごさなければいけない。書とわたしを憐れんでいる侍女、わたしを所有している領主と共に。

死者であることには慣れていたはずだった。だけども本物の死を味わうとそこの見えない大きな穴へまっすぐ落ちていく気分だった。社交界やサロンで男たちの見世物になっていた時より穏やかな時間で初めてここから抜け出したいと思った。抜け出してどうなる、社会で生きたことのない貴族が抜け出しても生きられると思えないし、何より責任によってルクベスが殺されてしまうだろう。しかし抜け出したい気持ちは収まらず、書は部屋の中ではなく屋敷を歩き回りなるべく明るい外で読むようにした。思ってしまっている、まだ生きていたいと人としていたいと。しかしこのままではそれをするのは出来ない。でも何がある訳でもないから外で書を読むことで生に手を伸ばしている。

歩いていると、廊下の隅に使用人とみすぼらしい格好の娘がいた。見たことがないので恐らく新しい使用人なのだろう。まだ、田舎臭さが抜けていないこの娘はわたしを見ている。見ないようにと言われているだろうによっぽど興味深いのでしょうね。笑いかける、ただの気まぐれでしかなかった。その瞬間の目をわたしは忘れないでしょう。一目でわたしを人として見ていないことは分かったけれどでも今までと違う。何なのだろう、あの目は知らない。うっとりしていて燃えていてわたしの胸を激しく打ちつけるようなあの目。決して性を感じているわけじゃないむしろ今まで一番死が目の前にあるような気がするのにそれが燃えている。胸だけが燃えるような溶けるような重くなっているような痛いような、全く分からない。娘の名前はリアリと言うらしい。村からやって来た新しい使用人はわたしを見かける度にあの目で見てきた。恐らくリアリは気づいていないのだろうがわたしはいつどこで見られているか分かった。わたしの知らない目を。

服が解けてしまった。ルクベスから聞いたリアリの話を思い出し裁縫をさせることを思いついた。一使用人が任されるような仕事ではないがルクベスの憐みによってわたしの願いは聞き届けられた。リアリの手による服は到底着られるような仕上がりではなかった。縫い目一つずつ丁寧に時間をかけてやったのだろう。しかし縫い目に集中しすぎた結果全体的に不恰好になってしまった。だけれども、この数の縫い目全て丁寧に周りが見えないくらい集中して作られたものだと分かるとリアリの目が分かった。あれは恐らく神を見る目。神への奉仕ならばこの程度の仕事苦でもないだろう。わたしは人では無い扱いを数多く受けてきた。道具や物としか見てない父も男達も領主も。手足を奪われた哀れな女だと思っているルクベス、わたしが屋敷に住んでいると思っていないチーリーも誰もが敬いながら自分はこの女よりも上だと見ていた。使用人たちもわたしを妖魔のように見ていた。しかしリアリは最初から自分より上だと思っている。初めて自分より上の存在と言う扱いをしてくれる人が現れた。知らない間にわたしは目の正体とその先に気づいていたのだろう。リアリはきっとわたしの為だけに破滅してくれる人間だ。わたしは本当に死にたかった、でもそれによって多くの死を生む気にはなれなかった。だけれども、リアリなら喜んで死んでくれるだろう。わたしのせいに死ぬことを喜んで。それに気づいた時本当の妖魔になることを決意した。その始めに話をした、声の無い言葉で。

リアリはわたしに心酔した。領主の恐怖を知らないこともあるのだろうが、彼女の頭はわたしの事しかないのだろう。ルクベスから警告された、死を見た者として見逃せないであろうし見逃したら死ぬのは自分だ。しかし、ルクベスの中ではわたしは物乞いの子供と同じだ。数少ない楽しみを奪う気になれずわたしとリアリの関係は続いた。恐らく、領主には遠くない時発覚しリアリは殺されそうになるだろう。その瞬間前に立てば向けられた暴力はわたしへと向かう。死ななくても大怪我はする。それに悲しみ命を絶てば被害はリアリだけで済む。いや上手くいけばリアリの命も助かるかもしれない。それを考え彼女と過ごした。リアリは結局わたしの顔のみ見て洗礼を受けた。彼女の気持ちを裏切ることの無いようふるまった。自分を殺すのは生まれてからずっと行っていたこと。リアリは常にわたしへ感情をぶつけてきた。楽しい嬉しい驚愕、様々な感情を隠すことなく見せた。そしてわたしの動き言葉体をうっとり見つめていた。かつてひざまずき美しい貴婦人と言ってわたしを誘った男がいたけれど、その心はこのようにすればこの女も自分に従うだろうという物だった。リアリは立っているだけなのにその眼でひざまずきわたしの手を取っている。どこまでも付いてくる、いつでも寄り添ってくれる、リアリ自身が嬉しいから。わたしは、体を刻まれたような気分だった。何度も何度も刻まれ、ただ悲しくてそのような気分になると書いた文章はあったがそんなものではない、もっともっと分からないものリアリといると知らないものばかりだ。

日々を長く感じた。老いて死ぬまでを待っていた毎日から日が沈むまで長く感じるようになった。同時にあの少女が、かつてわたしが殺した少女が現れる。私のように殺すのですか?と囁いている。そう元々はあなたの時と同じ事をもう一度起こす妖魔になって、それで死のうと思っていた。だけれども、もうリアリの笑顔から逃げられなくなった。殺すことも死ぬことも既に消え去っている。何故、知らない気持ちを与えてくれるからと言ってどうしてここまでわたしはリアリに心酔してるのか。その全ては雨の日に彼女の裸体を見た時知った。わたしは書を読んで多くの知識を持っていた。だからそれをどういう物かは知っていたが実際はどのような物なのか今迄の人生の中で知ることは一切なかった。それを現した様々な言葉が頭で蘇る、中にはあの知らない分からない気持ちに綺麗に当てはまるものもあった。

そうなのですね、これが恋。

領主によってかつてわたしが望んだ状況になった。だけど最早わたしは死を伴う破滅に興味をなくしていた。わたしと生き続けながら苦しむ破滅をしましょうと、大きな花瓶を振り下ろした。

領主が死ぬことによって未亡人として多くの仕事をすることになった。この屋敷を手放すことになるかもしれなかったが、わたしは男たちの手を振り払った。かつて貴族を捨て商人になろうと思い学んだ。それが役に立ったかは知らないが現実はわたしが思ってるよりももっとずっと簡単な物だった。いなくなった領主には親族という物が遠くの伯父位しかおらずその人物が新たな領主となりかけたが、わたしはかつて群がっていた男たちの手を借りて領主の義父、わたしの父を新たな領主に据えようとした。かつての没落貴族が地方領主へ。夢を見せられた父は奮闘し、わたしの願いは叶えられた。父には政治が分からない。わたしに出来るかは知らないが少なくとも父よりは上手だろう。父を傀儡にして実質わたしが領主に成れば良い。生ける死者になってから多くの知識を書を身に着けた。今までは分からなかったがわたしはどんな男よりも物を知っていた。これが自分で生きるという事、これが自由、これが人。

リアリと会えなくなった。未亡人としてこの屋敷の事であまりにもやることが多く、一つ一つは簡単でも集まればリアリと会話できないほど疲れ切ってしまった。日に日にリアリがやせ細り顔が死者のように青白くなっていくのはすれ違うたびに分かった。優しい娘だ、領主に殺されかけたという事、目の前で人が殺されたということが恐ろしいことなのだろう。リアリを思いしかし気づかれないよう使用人の体調に気を付けるよう管理を徹底させた。大きな仕事と葬儀を終え、精神的にも肉体的にもリアリに会えると思った。いや実際のところ無理にでも会おうと思えば会えたのではあるが。

領主が死んだため、ルクベスが付き添う理由もなくなり初めて一人で会いに行った。現れたリアリは今にも死ぬのではないのかと言うほどやつれていた。ゆっくりする時間が必要、ならば一緒に星を見るのが良いと思った。やつれていたのはわたしのせい。リアリの糾弾でわたしは知った。今までわたしは男に従えばよかった、自分の動きが相手に与える事なんて思いもしなかった。その結果があの少女であり、今それが再び起きた。領主殺しはこの娘に大きい傷を作ってしまった。わたしと領主を御伽話に例えて話すリアリはこわばっていた。

もしかしたら今以上に傷つけるかもしれない。わたしの行動がどういう結果になるのか分からない。知識で何とかならないものが多すぎる。だけども、今ここでわたしは離すしかないのだ。生まれてからこの星空の下へ通じる話を。

「楽しいお話をしてくれたお礼です。少し長くなりますが聞いてくれますか?」

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