【ブログ】はらぺこ満月 春のおかわり公演『SHOKUPAN1』のこと

編集長の園田です。先日、くすのき荘で【BITEキャラバン/木賃文化週間版】というイベントをやりました。その際にトークゲストとして参加してくれた星茉里さんが主宰する「はらぺこ満月」の公演が近いので、それについて書いてみようと思います。

はらぺこ満月は「“食”と“土地”にまつわること」を描く団体で、2017年に旗揚げされました。次回公演『SHOKUPAN1』(しょくぱんわん)は昨年11月に上演された45分の作品をブラッシュアップした「春のおかわり公演」になります。「木造空間を劇場化する魅力」というテーマで行われたトークイベント時に、星さんからお聞きした『SHOKUPAN1』に関する話を少し紹介すると……。


−−『SHOKUPAN1』は昨年11月初演、次の4月再演と、共にくすのき荘1階ロビーが会場ですね。例えば、劇場で上演する場合と、古民家アトリエ等で上演する場合では、お客さんが立ち寄りやすいとか、興味を持ちやすいとか、そういう違いが生まれるものですか?

星 やはり劇場は密室ですからね。劇場だと演劇と劇空間の外にいる人との距離が少し遠目かなと感じます。逆に、こういう日常的な建物で上演すると「あ、ここで演劇やるんだ」と気付いてくれたり。

−−くすのき荘の1階は道路に面しているので、確かに距離感が近めかも。

星 ご近所のかたで、普段から「この建物は一体何なのだろう?」と思っているかたがいらして、我々が1階で稽古をしていると話しかけやすいのか、立ち寄ってくれたこともありました。このお芝居は、劇中で食パンを食べたりコーヒーを飲んだりするのですが、その稽古をしていると「ここはカフェですか?」と入ってくる人も。

−−カフェ営業がはじまった! と思っちゃうのかな?

星 明らかに2席しかないのに。で、「いや、今度ここで演劇をやるので、その稽古を……」みたいな説明をしたり。

−−この公演は、本番中も通行人が行き来するので、ガラス戸は締めているけれど、お互いの様子が目に入る。通行人も中が見えるし、観客も外が見える。その混然とした雰囲気が「町と演劇の一体化」みたいに感じられ、僕はとても好きでした。

星 本番中に毎日通りかかるおじさんは集客チェックをしていました。

−−「今日は何人だ」みたいなこと? 余計なお世話ですね(笑)。

星 最終日は「今日は満席やな〜」と呟いて去っていきました。

−−何だろう? 我が娘を応援する感覚だったのかな?

星 どうでしょう(笑)。

−−では、その公演の概要を教えて下さい。

星 『SHOKUPAN1』は昨年11月に上演したものの再演で「おかわり公演」と銘打っています。その時は45分の作品でしたが、今回は前回カットした新たなシーンを追加して、約60分になりました。外の景色が変わると装いが変わる作品です。前回は11月でこれから寒くなる時期、今回は4月でこれから暖かくなる時期です。ある女性たちの、人生なのか、人生じゃないのか、そういうお話になっています。春は出会いと別れの季節でもあり、改めてそういったことも感じてもらえたら嬉しいです。果たして、食パンは食べることができるのか、食べることができないのか、という。

−−初演は食べられましたね。

星 ですね。どうぞお楽しみに(笑)。


初演を拝見しましたが、食パンを食べた記憶と、それにまつわる何気ない生活の機微が観客の脳内でよみがえる、ノスタルジックな一作でした。場所が持つ特性を活かした、劇場では得られない観劇体験になると思います。正に「食と土地の物語」と言えるでしょう。

【公演情報】
はらぺこ満月 春のおかわり公演『SHOKUPAN1』
2019年4月12日(金)〜16日(火)@くすのき荘1階ロビー
作・演出◇星茉里
出演◇豊島晴香 吉見茉莉奈

投稿者プロフィール

園田喬し
園田喬し
○演劇ライター、編集者、演劇雑誌『BITE(バイト)』編集長。2005年より演劇専門誌『演劇ぶっく』の編集部員として国内現代演劇の最先端を取材。演劇ぶっく副編集長を経て、現在は演劇雑誌『BITE』を発行、マスメディアの取材対象になりにくい小劇場シーンを積極的に取り上げている。この他、演劇情報媒体での執筆や演劇関連事業に携わるなど、その活動範囲は多岐に渡る。年間観劇数は150〜200本程度。落語、散歩、文鳥が好き。
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